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陣の縛りが消えた瞬間、妖が今だとばかりに空へと逃げていく。
「逃げてった逃げてった」
「いいのか、これで。また来るぞ」
「そん時はまた追い払う」
「封じておけばそんな面倒なことせずに済む」
「これに懲りてもう来ない奴かもしれないだろ。三回チャンス与えてやるんだよ、オレは仏だからな」
「鬼なのにな」
「うるさいぞ春海」
丙は呆れた様子で肩を竦める。
丙の言いたいことはわかっている。殆どがオレひとりで対処出来ないのに、まだ甘いこと言っていると。
だから強くならなきゃいけないんだ。強くなるために放課後は丙に修行させてもらっているところだ。今後は妖としての力もつけていくことも考えている。
あれ……。
「どうした、セツ?」
「ああ、いや、見慣れない蝶が飛んでたから。こんな季節に蝶なんて、南国から船で来ちゃったのかな」
「……」
丙が怪訝な顔でオレが蝶を見た方向を眺めている。
「あー動いたら腹減ったー。セツ、今日の夕飯なにー?」
「豚丼」
この間テレビでやっていた帯広のが美味しそうだったからうちで挑戦してみるつもりだ。
「やった! 早く帰ろうぜ」
「残りの授業受けてからな」
春海はあからさまに嫌な顔を返してきた。
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