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うちの死んだばあちゃんは、随分おっとりした人だった。オレと春海がなにか悪さをしても、あらあらまあまあ大変、と言うことは言うが少しも慌てた様子が無かった。そのあとじいちゃんには、ばあさんを困らせるなとはたかれたりもしたが、それも今となってはいい思い出でしかない。
「オレのじいちゃんと丙の御祖母さん知り合いなのかな」
「……」
丙は黙してしまう。また術でも唱えているんじゃないよな。
門まで到達するとその広さに思わず声をあげてしまう。
「うわーお屋敷だー」
やけに塀が続くなと思っていたが、すべて丙の家の土地だとは。
門を抜けると、目の前に伝統的な日本家屋が建っている。砂利道を通って石灯籠なんかを横目に本屋へ入ると、家政婦のような中年女性によって座敷へと通された。
お前ん家、家政婦さんいんのかよ、とボソッと丙に聞いたが無視される。
手当てしてこいと言ってもスルーされてしまう。
出されたのは湯のみに入った普通のお茶(と言ってもうちのような粗茶ではなさそう)だった。よかった、点てた茶を出されたらどうしようかと思った。
間も無く御祖母さんが入ってきて、正面に座る。薙刀は置いてきたようだ。
「壬はわたしの兄にあたる者だ」
今耳に入れた言葉を頭の中で整理する。
オレのじいちゃんの壬が、丙のお祖母さんの兄、ということは……。
「え、じゃあ、つまり丙とは、はとこにあたるってことだよな」
丙と顔を見合わせる。
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