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「血縁的にはそういうことになるが、絶縁したからな。我が家とは無関係と考えてくれていい」
「絶縁?」
それはどこかで聞いた話だ。
「壬はな、家督を継ぐべき者だったが、突然祓いの仕事から逃げたのさ」
じいちゃんも祓師だったのか?
春海が、祖父母は妖とは無縁の人たちだったと言っていた覚えがある。
「あれ、でも母は祓師だったと聞いてます」
どこかに弟子入りしていたと考えるよりは、じいちゃんに教えてもらっていたと考えた方がしっくりくる。
祓いの仕事から逃げたわけじゃあないのかも。その立場から逃げたのかもしれない。
「逃げた癖に結局逃れられなかったのだろうな。妖祓いとはそんなものだ」
妖が人に悪さしているのが見えてしまえば、止める力があるのに見て見ぬ振りとはいかない。
娘にもその力が遺伝していることに気付けば、それについて教えないわけにはいかない。
もしかしたらじいちゃんは、オレの正体にも気付いていたのかもしれない。妖気を封印されていたとしても、常にオレのそばには狼がいた。
「?」
あれ、なんか身体が重い気がする。
掴もうとした湯呑みを倒してしまう。中身のお茶が畳の上に広がる。すいませんの声も出てこない。
「お祖母様っ!!」
丙がまた非難するように叫ぶ。
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