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人間には、という発言も気になったが敢えて突っ込むのはやめておく。
「その優劣の区別はどうつくんだよ」
「妖の世界でこういう歌がある。鬼は人間より優れていると考えている、狼男は自分は人間だと思ってる、フランケンは人間になりたいと願ってる」
それはいつしか聞いた子守唄。
「春海は自分を人間だと思ってる?」
そう自然に聞いてから、聞いてはまずかったかなと思った。
だが春海は気にしてないようでさらりと答えた。
「どっちかっていったら人間側だね」
なるほどね。今さっきの話と矛盾してる気がするんだけど、そこはスルーしてやろう。
「人間があんな奴らに勝てるのかよ」
奴らは衝撃波のようなものでひと様の家の塀と公共の道路を破壊した。あれはゲームの世界のようだった。
「セツは、オレがこの十六年、なにもせず待ってたと思う? 舐めてもらっちゃ困るなぁ」
そう春海が徐に立ち上がって窓を開ける。
ぶわっと一気に外の風が流れ込み、思わず手で顔の前に壁を作る。
手の隙間から向かいの家の屋根の上に黒い影がみえる。
手を下ろして驚愕する。窓から顔を出して周囲を見渡すと、近所中の屋根の上に黒い影がいくつも並んでいるではないか。大きいのから小さいのまで、数えきれない数だ。
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