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「悪いようにしないと言ったのは私だけさ。甲たちが何をしようがそれは彼らの意思だろ」
「兄さん! セツはオレの友だちなんだ!」
丙が立ち上がって怒鳴る。
ああ、ごめん丙。帰れって言われたのにな。
なんか仕掛けられたみたいでこのままではマズそうだ。
「丙兄さまは鬼とお友だちだと?」
女の子の声がする。でも頭が上げられないので見つけられない。
これは丙の兄と妹に祓われそうになってるのか?
それは困る。
「セツは人間だ!」
「人間? お前は騙されてるんだよ。見ろ、本来の姿がみえてきた」
嘘だろ。鬼の姿が出てきてしまってるとでも?
いや、それは寧ろチャンスかも!
目を瞑って知ってる景色を思い浮かべる。
それが思いの外、簡単に出来た。これで妖界に逃げられる。丙には悪いがここはひとまず、逃げるが勝ちだ!
再び目を開くと、目の前に白亜の神殿があった。
うまく逃げられたようだが、重要なことを思い出す。
そっか、オレ妖界ってここしか知らないもんな。
そこはごくごく最近まで、自分の命を狙っていた実父とはじめて出逢った場所だった。戦いたくは無かったが、あの時はそうせざるを得なかった。
なんとなく気まずいので、あれから来ていなかったが、この場合は仕方が無いだろう。
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