一.師匠の家で《グランドマスターズホーム》

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 そこでこっちの血の気かサッと引く。 「あー!! ごめんっ! そうだった、オレ祓われそうになったんだった」 「なんだって!!」  春海がそれを聞き付けて飛んで来る。今にも丙に噛み付きそうな勢いだ。 「妖界にとんずらしたから何ともないんだけどな」  取り敢えず上がれと手招きする。 「あ、足は大丈夫か?」 「問題ない……」  靴を脱ぎながら丙が未だ固い口調で言う。 「あの人は本気で祓うつもりだった。あの部屋に妹の巽による呪縛を丹念に掛けて、逃がさないようにした上で祓う。あの人がよく利用する手だ」 「おいおい……」 「半妖だったのが救いかもしれない」  それを聞いて今更ゾッとする。 「丙の兄にしては随分血の気の多い奴なんだな。近場にそんな危ない祓師がいるとはな。気を付けよ」  春海も頬を掻いてそう宣う。 「オレと友達だなんて、お前の立場が悪くなるんじゃないか」  冷静に考えると、桃太郎の子孫の祓師が鬼と友だち、って良くないよな。 「そこは気にしないでいい。元よりうちにはオレや父のような穏健派と、祖母や兄の強硬派の派閥があるんだ」 「へぇ」  悪さをしない妖は見逃すという丙が穏健派なら、強硬派とは恐らく問答無用で妖は祓うべきと考えているのだろう。     
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