一.師匠の家で《グランドマスターズホーム》

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「現当主である父が穏健派だからな。オレが妖と何をしようが誰も文句は言えない」 「そうなんだ」 「だけど、武中家は力の強い者が家督を継ぐ習わしなんだ。次期継承者は兄だろう」  うわ、それからが怖い。そう思ったが口には出さない。 「兄貴のが強いの?」 「ああ。祓いの力は年の功で、鍛錬の歳月を重ねた方が有利だ。稀に、力の強い者が生まれる。妹の巽が多分それだ」 「妹さん?」  その問いに丙はこくりと頷く。 「だが、妹も甲が好きだからな、あいつも強硬派だ」 「……出くわさなければいんだよな、きっと」 「出くわしたとしても丙のちょっと強いくらいなんだろ? だったらオレには問題ねぇな」  丙の家の周辺には今後一切近付かないようにしよう。  春海は余裕ぶっているが、祓いは妖の力を無効にしかねない。 「……お前はわかってないな。穏健派と強硬派の違いは妖を選ばないだけじゃない。穏健派はよっぽどの危険な妖でなければ、妖界に帰す祓いをする。だけど、強硬派の彼らはすべての妖を、祓い消すんだ」 「祓い消す?」 「存在そのものを消してしまう……」  ゾッ。  春海と顔を見合わせて二人して肩をあげる。  これからは彼らのことも気にしなきゃならないな。  オレが相当不安そうな顔でもしていたんだろう、丙が目をしっかり見て告げる。     
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