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二.狼の円舞曲《ワルツ》
下駄箱に手紙が入っていた。
内容は今日の放課後部室棟裏へ来てくれという呼び出しだ。宛名は『赤口』とあり、丸字なので女子だろう。
まさか丙のように妖気を嗅ぎ分けることのできる女子高生がいて、妖だとバレたかと一日中考え、放課後ビビりながらも部室棟裏へ行く。
すでに女子が緊張した様子で待っていた。
目が合った時気まずそうに目を逸らされる。あれ。この感じ、ちょっと予想していたのと違うみたいだぞ。
「一目惚れしたの!」
あ、そっち!
「春海先輩に!」
え、そっち!?
なんだか変な緊張をしていたのか全身から力が抜けた。
「春海に恋したって?」
あの春海に!
「私1Eなんだけど、セツくんこの間丙くんのとこに来てたでしょ? その時、春海先輩が来て……」
丙のクラスに春海が来た時と考えて、『セツ、今日のお弁当マジうまかった! なにあのグソクムシウインナー!』と廊下から叫んだのを思い出す。
1Eの生徒だけでなく廊下にいた他のクラスの生徒にまで聞かれてしまい、セツ君てグソクムシウインナー作るんだーなどと、女子たちにぼそぼそ噂話され、赤面ものだった。
思い出しても春海に腹が立つ。
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