二.狼の円舞曲《ワルツ》

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 金曜の夜に訪れた来客に予想通り詰め寄られる。 「どういうことよ、お兄ちゃん!」  うわー。  そう、立夏と土曜日約束していたのだ。 「遊園地連れてってくれるって約束したじゃない!」 「ごめん、マジでごめん」  悪いのはもちろんオレですよ。  あっちでもこっちでも膨れっ面だ。 「でもさ、春海が心配だろ? もし妖だってバレたらオレにも被害があるし」 「なによ、この犬風情が! 巧くやりなさいよ!」  きっつ……。 「お犬様舐めんじゃねぇぞ! 生類憐みの令だとお前晒し首だからな!」 「なにそれ、バカじゃない」  きっつ……。  どうしようかな、春海なら巧くやってはくれそうだが、万が一ってこともあるしな。 「あ、じゃさ、一緒に原宿行こ。原宿も遊園地みたいなもんだし」 「そうなの?」 「ある意味ね」  春海も肯定的だ。 「だったらいいわ。そのハラジュクってところでも」 「結局はセツと遊べればいいんだろ、君は」 「犬が居なければもっといいんだけど」  春海は立夏のツンデレな態度がお気に入りなので、ワザと喧嘩を売るようだ。  春海には兄弟はいないのかな。 「残念ながらオレがセツの傍を離れることはないんだなー」 「いや、もう少しくらい離れてもいんじゃないか?」     
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