二.狼の円舞曲《ワルツ》

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 そう言うとガクッと頭を下げて項垂れる。 「セツくん、いつもオレを邪険にするよね……」  邪険にしているわけではない。  ただ、オレが生まれてからずっと傍に付いてるんだ。もう少し自分自身のために動けばいいのに、と思う。  今回の同級生の女子とのデート作戦も、仕返しするつもりだけじゃなかった。そろそろ母やオレとは違う大切な存在が出来てもいいと思うんだ。ていうか創るべきだ。  親離れ子離れとは少し違うかもしれないけど、彼女の一人でもつくったり、友だちと遊びに出掛けたりした方がいい。  オレも春海を幼馴染と思ってずっと一緒に遊んでいたが、それは少し違ったから、このままではマズいと思うのだ。 「ウザがられてるの気付かないの?」 「ひぇっ!?」  立夏の容赦ない言葉に春海が悲鳴のような声をあげる。 「せ、セツくーん」  あーあ、半泣きじゃないか。 「立夏、それは言い過ぎだわ」 「えー的確じゃない?」  ドSにも程があるわ。 「うわ、人間がうじゃうじゃ」  立夏が顔を顰める。  土曜日の原宿の人混みは確かにうんざりする程だ。     
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