二.狼の円舞曲《ワルツ》

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 春海が買ったばかりのトングでその何かを弾き返す。  するとそれが春海の足元でボンッと爆発した。 「危ねっ! ちょい、乱暴じゃねーか!?」  もし当たっていたら大怪我だ。ていうか猫足トング……。  隣を見ると、赤口さんが目を丸くしてわなわなと震え出す。 「お、おい?」  ばたーん、と勢いよく後ろに倒れる。 「赤口さん!」  春海が地面ぎりぎりのところで受け止める。 「うわー。でもこれでひと目を気にせずに済むな」  そのまま赤口さんを地面に寝かせ、立夏に頼み、春海が遠吠えをあげる。そして狼男の姿に変幻する。  やっぱ、戦わなきゃならないのか!?  丙の兄弟だ、出来れば避けたかった。 「?」  春海が軽く首を捻る。なにか違和感を感じたのだ。  オレの方もなんだかさっきから身体が重い。  たぶん丙の家でも受けた、妹の巽の呪縛とやらだ。  振り向くと後ろで立夏が苦しそうに脂汗を垂らしている。 「無理すんな、座ってろ」 「でも!」  春海もどんどん身体が重くなっていくようで、用心のためか動こうとしない。  この状況下では、彼のいつもの素早さは発揮出来ないだろう。  こんなんじゃ全員祓われてしまう。  背後でキキッと車が停まる音がした。こんな道のど真ん中では無関係な人も巻き添えにしかねない。     
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