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「兄さん、やめてくれ!」
車から降りてきた者はそう叫んだ。
「丙!?」
「やーっぱり、丙兄さまは鬼の虜となられたようですよ。可哀想だから私の手で祓ってあげますね」
愉しそうに女の子が言う。
やはり彼女が丙の妹だ。
丙に向かって何かを投げつけた。
丙が横に飛ぶようにして避けると、投げられたものが地面にぶつかって丙が先ほどまで居た場所で爆発する。
おいおい、兄弟げんかにしては激しすぎるだろう。
飛び避けた先で丙が足を庇うような仕草をする。未だ足が痛そうだ。
あれは単なる爆発物ってわけではないようだ。地面がえぐられたり焦げ付いたりするわけではない。
妖気の塊のように思える。自分も最初に丙に教わったものだ。恐らくそれを何らかの媒体を使って具現化させたものだろう。
それにしても彼女は呪縛を掛けながらも、闘うことが出来るのか?
以前九尾の狐の神社に出向いた時、丙は時間を掛けて守護網を張った。その後刀で戦えていたが、それまではブツブツとなにか唱えていた覚えがある。
では彼らは、呪縛を掛け自分たちに優位なテリトリーを作り、その中にオレたちが入ってくるのを待っていたということか。蜘蛛の巣にくっついてしまったってことか。
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