二.狼の円舞曲《ワルツ》

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 すぐ隣に長い白髪で長身の九尾の狐儀鳳が立っていた。着崩れた着物が男なのになぜか色っぽい。 「儀鳳、いつの間に」 「いつものことだろ」  まぁそうなんだけど、このタイミングでいつものように神出鬼没に現れるとは。 「九尾だ!」 「九尾……」  祓師たちがざわつく。祓師の間でも彼は有名らしい。 「なんだ、祓師どもか。お困りなら蹴散らしてやろうか?」  その提案は意外だった。常に傍観者でいる奴だと思っていた。 「あんま怪我のないようにできっか?」 「出来なくはないが、奴らの場合少し痛い目みせた方がいいぞ。修行とばかりになんでもかんでも祓ってやがる。この間南の方でまだガキの狐がやられてな、それを囮に何人もやられたらしい」 「……」  酷いことをする。  彼らは存在を消してしまう祓いをするという。 「……殺さないようにな」  儀鳳はフッと不敵に笑って答える。 「どうかな」  次の瞬間、一人の祓師が狐火に巻かれている。 「うわぁぁあ!」  狐火は単なる炎とは違う。酸素を使ってものを燃やすのではなく、対象者の妖気を使って燃するのだ。  それでも火は火だ。狐火に巻かれた祓師は狂ったように地面を転がってもがく。仲間の祓師も外套で叩いて火を消そうとするが、そんなんじゃ狐火は消せない。 「なかなか厄介な空間だな」     
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