二.狼の円舞曲《ワルツ》

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 そうは言いながらも狐火を操って一人の祓師を戦闘不能にした。焼死したわけではなく、妖気を燃やし尽くし気を失ったところで狐火が消えた。 「幻影は無理だ」  思ったより力が出ない様子。手加減がわからなそうだから丁度いいかもしれない。 「うん、息苦しいな」  狐火が実際燃えたわけではないが、なんとなく火があがったことによる息苦しさがある。 「お兄ちゃん、火なら私も」 「立夏、ここはいいから」  立夏が立ち上がろうとした気配を感じて振り向いて止める。狐火に対抗して鬼火を出されたら堪らない。 「セツ!」  丙が叫んだ。 「邪魔をするなぁっ!!」  祓師たちに向き直った時、甲が立て続けに矢を放ったところだった。  放射線状に光の矢が向かってくる。 「立夏!!」  祓われる!  立夏へ伸ばした爪の先から鬼の姿へと変わっていく。爪と牙が鋭く光り、腕や腰に紋様が浮き上がる。  全身が鬼へと変幻した瞬間に、打ち払うようにして、甲の繰り出した矢を術者ごと弾き飛ばす。  まただ。またこうなってしまった。  力が湧くように溢れ出す。 「甲兄さま!!」  甲が壁にぶち当たって転がる。呻きながらも頭を上げて、こっちを睨み付けてくる。  流石に自らが出した術にやられる輩ではないようだ。咄嗟に身を護る方に変えたのだろう。 「鬼めが!」     
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