二.狼の円舞曲《ワルツ》

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 オレに仇を為そうなどと無謀にも程があると。  この呪縛は、巽によるものだということはわかっている。さっき春海が地面を揺らした時、呪縛が少し揺らいだ気がした。術者の気持ちに変化があれば術は弱まるのか? それにしては春海の時以外で弱まった気配はない。  九尾が一人の祓師を燃やそうが、鬼のオレが兄をぶっ飛ばそうが、動揺すらしないということか? では、なぜ春海の時だけ? 地震が苦手な人種か?  そもそも丙は刀を、甲は弓矢を使うが、巽は具現化や増幅させる媒体無しで祓いを行うのか?  呪縛を練るのになにか使っているんじゃないか。  周囲を確認してみるが、丙のような赤い糸は見えない。  コウモリのような羽を使って少し飛びあがってみると、祓師たちが慄いている。  少し浮いてるだけなのにかなり視界が広く感じる。状況がすべて見渡せるのは気分がいいな。  世界のすべてが自分のものになったみたいだ。  今、電信柱の下で何かが光を反射してキラリと光った。あれは、鏡だ。  一瞬で理解した。翼をはためかせ風を起こし、鏡を巻き上げる。  あれは鏡に映した世界を呪縛に掛ける物だろう。先ほどは地面が揺れた時に鏡が揺れ、映した世界が歪み、呪縛が弱まったのだ。     
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