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反射で手摺に手を伸ばすが、掴み損ねた。
「っ!?」
ドタタタ、と激しい音がして身体にじんわりとした痛みがくる。
だが、十二段の階段から落ちたというのにあまり衝撃を感じなかった。
冷たく固い踊り場ではなく生ぬるいなにかが下にある違和感に、閉じていた目を開くと、春海の顔が物凄く近くにあった。
「あれ……」
「だいじょぶか?」
「きゃあ!」
女子の悲鳴で我に返る。
今自分は階段の踊り場で、半分押し潰す形で春海に抱えられている。それが彼の顔が至極至近距離にある理由だ。
「いや、抱き合ってないから。踏み外しただけだから」
身体を起こしても、まるで馬乗り状態だ。
女子は見ないように見ないようにでも見たい、というように顔を手で隠しながらそれでも隙間から興味津々の目を覗かせて、階段の端っこを通るようにして逃げて行った。
助けてもらった身ではあるが、納得いかない仏頂面で文句が口に出る。
「あんたどっから現れたんだよ」
「そこから見えてさ」
踊り場の窓を差して飄々と言ってのける。
「たまたま校庭で体育の準備中だったからよかったもののー」
校庭からすっ飛んで受け止めたというのか、こいつは。
「だからってその速さは異常だよ」
「立てるか……いてっ」
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