三.街中の歌姫《ディーバ》

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「やっぱり貴方、妖よね?」  指を差して首を傾げる。仕草が女性すぎる。 「え、いや、だから」 「別に誤魔化さなくったっていいのよ。あたしも妖なんだから」  え?  確かに凄い奇抜な格好をしているが、歌舞伎町二丁目やテレビの中によくいるオネエという人種であって、妖だとは思いもしなかった。 「どうやら貴方、妖気が読めないみたいね。だから自分の妖気を隠しもしてない」  妖気を隠すなんてことが出来るのか。鬼であることを隠すには鬼にならないようにすればいいのだとばかり考えていた。狼男もしっぽや犬歯を隠せばいいのだと思ったがそうではないのか。 「こっち生まれで妖界に行ったことないでしょ? そういうコ、最近増えたのよね。向こうで暮らせば妖気の隠し方を知らないと生きていけないのよ。貴方からはほんの少ししか感じないから妖力はそこまで強くないんでしょうけど、だからこそ隠さないとなのよね」  妖界には二度程行ったことはあるが、口を挟む隙がない。  だからといって、半妖だと言ったら余計な混乱を生みかねない。 「あたし、そこのバーでママやってるの。ちょっと来なさい、一杯奢ってあげるから」 「いや、オレ夕飯の買い物あるし、そもそも未成年だし」     
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