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「お前のが怪我してんじゃん。……これは保健室いった方がいいな」
痛がった足は赤くなって少し腫れている。
春海が少し変な顔をしたが、肩を貸してあまり縁のない保健室に向かう。
ノックして入ると、いつも影の薄い保健室の先生がイスをくるりと回転させた。
「おー、どーした、わんこう」
「セツが階段から落とされてさー、バッチシ受け止めたんだけど」
「結果足を強かに打ったと」
春海は先生のことを知っているようだ。まぁ、二年にもなれば多少関わりもあるだろうか。それにしても……。
「どれ……、腫れるかもしれないが問題ないな。舐めときゃ治る」
「雑だなー」
ペンッと湿布を貼ったところで、白衣の先生の長めな前髪の奥の目と合う。
「あの、今さっき先生、こいつを犬呼ばわりしませんでした?」
「あん?」
「……」
春海がまた変な顔をする。
「そうだったか?」
先生はメガネのサイドを軽く触れてあげながらとぼけた顔をするが、どう見ても誤魔化している。
春海を睨むと溜め息を吐いた。はいはい、という降参の合図だ。
「誤魔化す必要ないですよ、せんせ。昨日ぜんぶ吐かされたんで」
「なんだ、そっか、そろそろ十六になるって言ってたか」
「全然着いてけねんだけど。先生もアレなの?」
二人で会話されてもな。
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