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丙の態度からして、強く責められることはないとは思っていたが、反省しているこちらからすればあまり咎められないのも居心地がいいとはいえない。
それと、気になることがあとひとつ。
「あのー、高そうな鏡を割ってしまって」
丙の妹の持っていた、写した世界に妖力を抑える呪縛をかける鏡を、宙に巻き上げて落として割った。ちょっと邪魔だったので。
「あの鏡は、丙の宝刀と甲の弓に付いている勾玉とセットになる家宝の鏡だ」
うわ、マジか、弁償モン!?
さあっと青褪めるのがわかった。
「実際、鏡の部分は何度も割れたり錆びたりして交換しているから安心してくれ」
「よ、よかったー。いや、でもホントすいません。鏡代弁償させてください」
「セツは気にしなくていい。明らかにあいつらが悪いんだから」
「そうはいかないって」
六白さんはスコーンにクロテッドクリームとジャムをのっけて口に運ぶ。
「御存知の通り、武中は内輪もめの最中にある。長年あった穏健派と強硬派の溝が深まり、この時代では修復出来ない程となっている。このままでは家督争いで武中家が二つに別れることにもなり兼ねない状況なんだ」
優雅に紅茶を含みながら話しているとは思えない内容だ。思想の違いで先祖代々続いてきた家の分裂もありえるだなんて、かなり大事じゃないか。
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