四.祓師の会合《ミーティング》

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 自分は嫌なことは寝たら忘れるようにしている。それは決して本当に忘れるわけではなく、忘れた風を装っているだけだ。伝染する想いは悟られてはいけない。  死んだ人のことを想う気持ちは大切だ。でもそれよりも優先すべきは、そばで今を生きるものたちだ。 「一緒に暮らすのは確かに問題かもしれない」  春海もいい気持ちはしないよな。 「でもオレ、向こうのことなんにも知らないから、手助けしてくれる人が必要なんだよ」  スーパーなんてものがあるのか? そもそも妖はなにを食べるんだ? 人間界にある肉や魚や野菜があるだろうか? 電気はあるのか? 水道は?  ほら、どう生きればいい。 「出来れば春海がいてくれるといんだけど、これ以上お前に頼るのも……」 「た、頼ってよ! オレ、セツが行きたいなら、着いて行くし!」  半分泣きそうな声、今にも縋り付いて来そうだ。 「あ、ホント?」 「ホントホント!!」  まるでしっぽ振ってるみたいだ。  なんだ、そういうことか。置いて行かれるとでも思っていたのかもしれない。  春海はオレのためにこっちにいたんだ、そんなわけないのに。  でも、ちょっと安心した。 「まぁ、卒業後の話だからな。まだ二年ある」 「そんなこと言ってたらあっという間なんだぜ。じゃあオレ、一年先に卒業するから向こうで暮らす準備はじめなきゃだ」 「よろしくな、春海」     
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