二.天地始粛

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「オレは人間、人間」 「この清明先生はオレの正体も、セツのことも御存知なんだよね。だからと言って心配することないよ。こいつの弱みもちゃーんと握ってるから」 「弱みとは思ってないけどな」 「そうっすかー? この人、ネクロマンサーなの」 「ネクロマンサー?」 「死体使って低級霊入れ込んで遊んでんだよ」 「趣味、悪くないですか?」 「五月蝿いよ」  ネクロマンサーというものがよくわからないが、オレに十六年黙っていた秘密を以前から共有していたのだから、春海にとってそれなりに信頼のおける者なのだろう。 「で、お前は突き落とした奴の顔は見たのか?」  一瞬のことだったのと、ぼうっとしていたので、殆ど見えていない。 「……知らない奴だったとしか」 「オレはバッチリ」 「え! 顔見たのか?」  突き落とした奴の顔を校庭から見えたというのか! 「いんや。においを覚えた」 「におい?」 「ああ、流石オオカミさんだな」  清明先生が納得げに数回頷く。  そうか、狼は嗅覚が優れてるんだっけ。 「あれは爬虫類のにおいだよ」 「爬虫類? トカゲとか?」  爬虫類の残り香を残すなんて、爬虫類をペットにして飼っている人間だろうか。 「なるほどなー」     
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