五.河童の里《ビレッジ》

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五.河童の里《ビレッジ》

 儀鳳に聞いた河童の里を、春海と丙、清明先生も同行し、訪れることにした。  祓師の間でも河童は滅びたとされていたようで、丙も興味があるらしい。  先生は先生で。 「いやぁ、河童がホントにいると聞いて、見に来ないわけには行かんだろう」  と、運転手を買って出てくれたので助かる。大きな一眼レフカメラまでも持ってきている。 「なんでそんな河童人気なの……」  狼男の春海はちょっとイジケている。  現れるのは朝方だというので、前日の夜に家を出て、河童の里の傍で仮眠した。  夜が明ける前に起き、春海が用意した鳥の匂いをたっぷり付けた毛布に包まり人や狼の匂いを隠し、身を潜める。  すると、緑色のものが水からザバリと出てきたではないか。  小学生の子供くらいの大きさで、頭に皿も乗っかっており、亀の甲羅を背負っている。 「うわーマジで河童がいるー!」 「ホントだ!」  小声でひそひそと会話する。  春海が何も言わないので見ると、目をキラッキラさせていた。  感動のあまり声も出ないようだ。  丙も河童から目を逸らさずに一言呟く。 「凄いな」  本当に想像通りの河童だ。  立夏も連れてくれば良かったかな。 「じゃあ、行ってくるぞ」     
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