五.河童の里《ビレッジ》

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 道中誰が話しかけるかという議案が持ち上がり、鬼や狼は脅かしてしまう可能性が高く、丙は祓師だから論外、となると河童は一番人間と友好的なはずなので、ここは先生だろうと可決した。  先生がそっと茂みから出て行き、河童に近付く。 「あのー」 「!」  先生に気付いた河童はビクッと飛び上がり、川の方へ逃げてしまう。 「あの、待って! 話がしたいだけで!」  呼び掛けも虚しく水の中に消えてしまった。  オレたちも茂みから出る。 「せんせー頼むよー」 「オレのせいじゃない、断じて違う」  口がくちばしだったけど、言葉は話せるのだろうか。ドナルドダックのような声を想像をする。  河童は妖界から出て行き、人間界で暮らして長いという。だから人語を理解出来ないわけがないと春海も先生も言う。  彼らは綺麗な河川でないと暮らせないので、人間に紛れて生活するのは難しいのだろう。綺麗な河川が減った今、彼らはどのように生きているんだろうか。 「たぶんどこからか様子を見ているはずだから、暫くここら辺にいよう」 「釣りでもして気長に待つか」 「悪い人間だと思われないように気を付けろよ。ただでさえ悪人なんだ」 「なんだと?」  丙も慣れてきたのか先生と話すようになってきた。皮肉や嫌味が殆どだがいい傾向だとは思う。 「セツ、ボートに乗ろうぜー」 「ボートなんてあんの?」     
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