五.河童の里《ビレッジ》

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 今日は近くの温泉に一泊する予定だ。明日の朝またチャレンジすることも出来るので慌てずにいこう。  あれ?  気付くと見知らぬ景色に変わっていた。朝方だったはずなのに、夕暮れのように空が紅い。カラスの声が聞こえそうなほどだ。  川にいたはずなのに、なにもない野原になっている。見たことない野花が咲いている。  この雰囲気、妖界じゃないか? 川遊びしていたはずが、いつの間に妖界に来てしまったってことか?  ハッとして自分の姿を確認する。 「あれ、鬼になってない」  爪も犬歯も伸びてないし角も生えていない。翼もなかった。  鬼の姿に変わっていないのにこっちに来れたのか?  ということは、自分は人間の要素が強い状態ということで、マヤさん曰くほんの少ししか妖気が感じられないでおいしそうにみえる、かもしれない!  まだ意識的に鬼になるのが簡単には出来ないのでピンチすぎる。  妖に気付かれる前に戻らなきゃだ。  集中しようと目を瞑ったところで、誰かの気配がふと現れる。 「セツ!」  春海だ。  流石、速攻迎えに来てくれたようだ。  血相変えて駆け寄ってくる。 「セツ! 大丈夫か?」 「悪い、なんか来てて自分でもびっくりした」 「ああ、水は向こうとこちらを結びやすいんだ。特にあそこは河童の妖気に満ちたところだからな」     
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