五.河童の里《ビレッジ》

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 そうなんだ。だから儀鳳も池を使うのかもしれない。  あれ、でも狐は妖界から離れて時間経ってるって言っていたよな。なんのための池なんだろ。 「ここは妖界のどこらへんか知ってる?」  周囲には妖の気配はなかった。こんなのどかな場所もあるんだ。 「知ってるよ。昔よく来たところだ……」  懐かしそうに遠くを見る。  少し回ってみたい気もするが、今はそれどころではなかった。 「さ、バレないうちに帰るぞ」  春海がオレの腕を掴む。  先ほどの川の情景を思い出す。 「セツ!」 「無事か!?」  戻ると腰まで川の中だった。  丙と先生が血が通っていないかのような顔色で迎える。だいぶ心配掛けたなこれは。 「ごめん、大丈夫」 「そんなに深くないところなのに急に姿が消えたから、溺れたのかと思ったぞ」  先生は潜って探してくれたようで頭までスブ濡れだ。  取り敢えず川から出ようとざぶざぶ進む。  あれ、なんか足のかかとを強く押し上げられた気がする。  水の中を見てみると、人影があり、驚いて慌てて水から上がる。 「なんだ?」 「河童だ!」 「え?」  今居たあたりをみていると、河童がぷかりと顔を出した。 「溺れたのー?」  河童が喋った! 「あ、違うよ。でもありがとう」 「そう。気をつけてねー」     
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