五.河童の里《ビレッジ》

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「漸く暦の秘密のお友達に逢えたわけだよ。あ、キュウリあげるね」  嬉しくて堪らないって感じだ。  河童はこちらを警戒してないみたいで春海のキュウリを受け取る。  本当にキュウリ好きなのかな。 「君、暦の子ども?」 「ああ」 「そうかー暦すごいー」  河童がぶるぶると震えて感動している。  ホントに友達だったんだな。多少感慨深いものがある。 「暦、遊びに来なくなったー」  河童が目尻を下げてオレをジッと見る。  母は、君のお友達の暦さんは……。 「死んじゃったんだ」 「そうなのー……」  しょぼんと水に沈み込む。 「暦は水神さまを助けてくれたのー」  水神さま? 「河童は義理堅いと聞いたな」  丙がぽつりと呟く。研究熱心だな。 「水神さまってやっぱり妖かな?」 「暦の子ども、水神さまに会うー?」 「会わせてくれるの?」 「いいよー」  あっさり答えた。  母の友だちな河童が慕うのだから、危ない妖ではないと思うが警戒はしておこう。  河童の案内に従い着いたのは、水田に囲まれたちいさな杜だった。 「鎮守の森かぁ。小さいながらもちゃんとしてるな」  先生が周りを見渡しながら感心する。  儀鳳のいた神社より全然ちいさいが鳥居も立っている。  奥にある祠の前にきた河童はキュウリを供える。     
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