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「水神さまー、暦の子どもが来てくれたー」
水神とはどんな妖なのかと興味津々で祠を覗き込む。
ポツポツっと水滴が落ちてきたので、雨かと見上げた瞬間、バサーっと水が降ってきた。
当然全身がビショ濡れだ。
「な、なっ!?」
雨ではなくバケツで水を引っ掛けられたような感じだ。
「ひでーすげぇ濡れた」
「タオルタオル!」
「……」
丙はうっとおしそうにペッチョリ額に張り付いた前髪を無言で上げる。
なんなんだ一体! とんだ災難じゃねーか。
水に気を取られた一同が前を向き直ってギョッとする。
いつの間にか祠の前に水を纏った蒼い龍がいるではないか。
そう、龍だ。想像上の生き物そのままの龍がいる。
「りゅ、竜王じゃないか!」
「竜王?」
春海が驚きに満ちた声で叫ぶ。
龍は目を細めてこちらを伺っている。
「水を司る妖の上位にいるやつで、昔から人間とちかいところにいる存在なんだ。この地では田んぼや畑の農業が主だろう? 雨乞いをしたり、水害から護ってもらえるよう祀ってるんだろ」
清明先生も興奮した様子で説明してくれる。
「祓師に水神が憑いた人間もいるというよ」
「へぇ」
「仲良くなっておいて損はない妖だ」
人間と悪くない関係を築けているなら話せない相手ではないだろう。
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