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河童と親しくなれればと考えていたが、思わぬ収穫を得られそうだ。
「ほう、暦の子か」
竜王がふんふんと匂いをかいでくる。動くと水飛沫が飛ぶ。
「なにやら鬼の気配がするが」
「オレは人間の母と鬼の子です」
隠すと為にならないだろうから正直に言う。
竜王はぶるんと身体を震わせる。
「暦は鬼と契を結んだのか。酒天童子と子を為した人間がいると聞いていたが、それが暦だとは……」
嘆かわしいというように頭を振る。
「愚かな子だ。だから妖に近付き過ぎるなと言ったのに」
そんな言い草はないだろう。
自分も妖のくせにどういうことだ。
「愚かではありません!」
「せ、セツ!」
春海が慌てるのがわかったが、もう自分でも止められない。
「彼女は他の種族と歩み寄ろうとしただけだ。それによってオレはこの世に存在することが出来たんだ」
きっと妖だろうと評判悪い鬼だろうと関係無かった。
「そして自分の命を賭して産んでくれたんだ。母親には感謝しか無い」
「セツ……」
他者に愚かなんて言われる謂れはどこにもない。
噛み付いたオレに対し、竜王はピクリとも表情を変えない。
「ふむ。お前の存在は世を揺るがすというが、その意味がわかる気がするな」
急になんだ? 怒らないのか?
「どういう意味ですか?」
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