五.河童の里《ビレッジ》

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 河童と親しくなれればと考えていたが、思わぬ収穫を得られそうだ。 「ほう、暦の子か」  竜王がふんふんと匂いをかいでくる。動くと水飛沫が飛ぶ。 「なにやら鬼の気配がするが」 「オレは人間の母と鬼の子です」  隠すと為にならないだろうから正直に言う。  竜王はぶるんと身体を震わせる。 「暦は鬼と契を結んだのか。酒天童子と子を為した人間がいると聞いていたが、それが暦だとは……」  嘆かわしいというように頭を振る。 「愚かな子だ。だから妖に近付き過ぎるなと言ったのに」  そんな言い草はないだろう。  自分も妖のくせにどういうことだ。 「愚かではありません!」 「せ、セツ!」  春海が慌てるのがわかったが、もう自分でも止められない。 「彼女は他の種族と歩み寄ろうとしただけだ。それによってオレはこの世に存在することが出来たんだ」  きっと妖だろうと評判悪い鬼だろうと関係無かった。 「そして自分の命を賭して産んでくれたんだ。母親には感謝しか無い」 「セツ……」  他者に愚かなんて言われる謂れはどこにもない。  噛み付いたオレに対し、竜王はピクリとも表情を変えない。 「ふむ。お前の存在は世を揺るがすというが、その意味がわかる気がするな」  急になんだ? 怒らないのか? 「どういう意味ですか?」     
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