五.河童の里《ビレッジ》

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 ここに自分の目指すべき道があるのではないだろうか。 「殆どの人は妖の存在を知らないんです。だからオレは知ってもらいたいと思う。そこからはじめないと、共に生きてることにはならないから」 「お前の望みが叶うことは難しいだろう」  竜王はそうばっさり言った。  神がつく存在に望みは叶わないと言われると、かなりくるものがあるな……。  妖には人を襲うものも食べるものもいるというのだ。当然理解されようがない。  人間も見た目で判断するから異種と捉えて必ず差別をする。彼らの力を悪事に利用するものも出てくるだろう。  でも。  そうであっても、オレがオレであるために、諦められないものだ。 「今すぐの話じゃない。長い時をかけて変えていくものだろ。まずはオレが知ることからはじめてる。オレも知らないのに、人に知ってほしいなんておかしな話だろ?」  竜王がオレを見据える。かなり恐い目をしているが、怯える謂れはない。 「暦と同じ目をしている」  自分は母の目を知らない。  だけど、母の想いは知っている。それは自分が引き継いでいくものだ。     
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