Extra edition2 和室十畳

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Extra edition2 和室十畳

「セツー、夕飯前に温泉行こうぜー温泉ー! 濡れちゃったしさ」  ホテルにチェックインして部屋にきて早々春海が言う。  まだオレは荷物も置いてないんだが、気持ちはわからなくもない。  なぜなら、川に入ったお陰でズボンは濡れ、竜王に浴びせられた水により頭と上着もびしょ濡れになったが、流石にまだ乾いておらず、ホテルのカウンターの人に訝しげな顔をされたのは言うまでもない。  この川臭い濡れ鼠のまま夕飯というのも嫌なので賛成する。 「ああ、そうだな。丙は?」 「行く」  丙はすでにタオルと浴衣と替えの下着を手に持っている。  ……早いな。 「先生は?」 「オレも行っとく」  じゃあ全員で行くか。混んでないといいな。 「うおー露天風呂ー!!」  春海が叫ぶ。 「他の客もいるのに恥ずかしい奴だ」 「セツ、他人のフリしよう」  三人で目を合わせてうんうん頷く。 「すげぇなここ、夏は流れるプールもあるんだって」  うわ、話しかけられちゃった。 「? どうしたんだよ、セツ。温泉好きだったろ?」  先生も丙も目を逸らして離れていく。オレも切り捨てられた!! 「春海、声のトーン少し落とそうぜ……」 「え? なんで? 響くのがいいんじゃん」     
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