Extra edition2 和室十畳

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「……黙らないと沈める」 「……なに怒ってんだよ、セツ」 「お前がうるさいからだよ!」  少し自分より高い位置にある憎い頭に向かって、激しく頭突きをかましてやる。  お陰で温泉に入っている間は静かに過ごせた。  視線を感じ横にいる先生を見遣ると、自分の裸をじっくり観察されていた。 「いい身体つきになってきたじゃないか」 「やらしい目で見んな」  確かに丙に鍛えられたお陰もあって、体育会系の部活をしている連中にも劣らない肉体になってきている。もしかしたら鬼の血が流れてるからでもあるかもしれないけど。 「しっかし丙は相変わらず細っこいな」 「……」 「肉あんま食べないからじゃないか?」  甘いものは食べてそうだけどな、父親の影響で。 「あんたはそろそろ腹回りにくるだろうな」 「残念でした、体脂肪率は平均以下だ」 「それでも重力に負けてくる」 「うるせーな!」 「春海、頭ちゃんと拭けよ」 「いーじゃん自然乾燥で」  まだいじけてやがる。 「ハゲるぞ」 「オレの家系ふさふさだもん」 「頭皮事情は遺伝だけじゃないんだからなー」  先生のその言葉にハッとして慌てて春海の頭をガシガシと豪快に拭いてやる。 「せ、セツー激し過ぎ!」     
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