Extra edition2 和室十畳

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「もう年齢的に焼肉とかステーキはキツイな。こんくらい少しで調度いい」  三切れの和牛と地元野菜の陶板焼きを指して言う。  隣を見るとすでに春海は肉を平らげてしまっている。春海には足りないようだ。 「春海はなんでもいくよな」 「野菜残してるぞ、野菜」  言われてみれば、陶板焼きの野菜だけでなく、先付の小茄子田楽や空豆などがぽろぽろと残されている。 「実はちょっと避けたいのが野菜」 「そうだったのか?」  そういえば、たまに外食すると付け合わせの人参グラッセやコーンを残すことがあったな。  うちで食べ残すことが全くない春海なので、ぎとぎとと油多いからかなと思っていたのだが。 「セツが作るのはなんでもウマいもん」  なんだか急に恥ずかしくなった。オレの作った料理は苦手な野菜でも食べるなんて、照れるしかない。  春海、お前いい旦那さんになれるよ。相手がオレ限定でなければの話な。 「セツくん、顔真っ赤!」 「うるさいな!」 「セツ、今度オレもお前のお弁当食べてみたいんだけど」  先生が手を挙げる。 「え?」 「オレも」 「丙も?」 「いやぁ、いつも旨そうな弁当作ってんなぁって指咥えてたんだよね」 「ふつーだよ。同じメニューばっかだし」     
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