Extra edition2 和室十畳

5/9
前へ
/243ページ
次へ
 夕飯に出したものを少し残して置いたり、最近は自然解凍で食べられるお弁当用の冷凍食品もあるので楽することもある。 「ダメー、セツの手料理はオレ限定ー」 「そんなことはないから、今度時間ありそうだったらな」  あっさり否定すると春海の眉が下がる。 「おお、よろしく」 「頼む」  しゅんとした春海がぼそりと呟く。 「……オレ、手伝う」 「お前は手伝うな」  先生がすぐさまに拒絶した。 「セツは嫌いな食べ物あるのか?」  人のは聞いて自分のは敢えて言わなかったのだが、敏い丙が気付いてしまう。  なんか反応がわかるので言いたくない。 「そいえばセツの聞いたことないや」 「お前が作るんだから、勿論嫌いなものは使わないよな」 「うわ、それ卑怯ー」 「それは作れないお前が悪い」  言わなきゃダメか?  往生際悪く出来るだけ聞き取れない声で言う。 「オレは……ニンニク……ダメだ……」  三人がぽかんとする。 「……え、そなの?」 「……やっぱ吸血鬼?」 「……なるほど」  風味付けにいいのも、栄養価が高いのも知っているが、あのニオイがどうしてもなぁ。 「居酒屋には欠かせないんだけどなぁ。お前の好きな鳥の唐揚げもニンニク使うと旨味が増すぞぉ」 「おい、酒……」  丙のムスッとした言葉に先生の方を見ると、いつの間にか日本酒を手にしていた。     
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加