Extra edition2 和室十畳

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 反対に、妖も人の多い都会では動きにくいだろうし、代々住む人も少ないのでもし何か不可思議な現象が起きたとしても妖のせいだとはあまり考えないかもしれない。  つまり都会に現れるのは巧く化ける強い妖か強い怨念を持った悪霊だということでもある。  そんなこと考えていると、丙がぽつりと呟く。 「男四人雑魚寝はきついな」  彼の漏らした不満に思わず笑う。  自分はそうは感じなかったが、いつも一人で祓いの仕事に出向くという彼には、十畳に四人はいろんな意味で窮屈だったのかもしれない。 「オレは面白かったけど。畳で寝るの久々」 「そうか」  帰り際、ホテルの一階で小規模ながらお土産が売っていたので、レキさんや立夏へ温泉饅頭を買って帰った。 「お兄ちゃん、なにこれ」  なになにーとテンションあげながら立夏が蓋を開け、中身をみた瞬間ぴたりと止まってその一言。  わかりやすいやつだと苦笑するしかない。 「人間界の温泉饅頭なるもの」 「地味ぃー」  ものすっごいがっかりな顔をされる。  それは茶色くて丸く温泉のマークが焼印されたノーマル中のノーマルな饅頭だ。地味とか考えたことがなかった。 「あ、でも立夏、味はなかなかだよ!」  焦ったレキさんがすかさずフォローする。もう一個食べてしまったようだ。     
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