六.セイレーンの予言《プリディクション》

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 新種発見とばかりに大々的に全世界に広められたらいいのかもしれない。はじめは嘘だろと信じない人も多いだろうが、徐々にそれは本当かもと揺らぎ、いづれ当たり前の存在となっていく。  それは流石にいち個人の発言だけでは厳しいよな。  どこかの大学教授とか、水族館や動物園のような生物専門の場所に勤務してる人間が後ろ盾してくれればいいが。 「今日は丙との修行は休みだったよな?」  先生がなぜか改まって聞く。 「そうだよ。スーパーの特売日だから」 「……」 「なに?」  立派な主婦だろ? 「お前に会いたいっていう奴がいるんだが、放課後ちょっといいか?」 「オレに?」 「ああ」 「……妖とか?」  先生を介してオレに会いたい奴などそうとしか思えない。 「まぁ、そうだな。あ、警戒しなくていいぞ。春海も丙も呼ばなくていい」 「……わかった、特売の品は春海に頼むわ」 「……」  先生が何か言いた気に目を細めた。  放課後、保健室に入ると、見覚えのある人がいた。 「あれ、君は……」  先日近所で迷子になっていたマヤさんに連れて行かれたお店の歌姫だ。  オレが鬼だとわかると、店から急に追い出されたんだ。  今もオレを見て固まってる彼女について、先生が説明する。 「あのバー、オレが通ってるとこなんだよ。こいつの歌を聞きによく行くんだが。以前チラッとお前の話をしたことがあってな」 「いったい何の話したんだよ」     
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