六.セイレーンの予言《プリディクション》

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 すげぇ嫌われ様だったぞ。  なんだかあのぶつけどころのない不満が再熱しそうだ。  それを敏感に感じ取ったのか先生がドギマギする。 「いや、半妖で苦労してる奴がいる、とか、過保護な狼がうるせーとか、そんなんだよな?」  彼女はこくりと頷く。  じゃあなんなのだ、あの取り乱し様は。今の石化は。鬼がなんかしたとかそんなようなことを言っていた気がするが。 「どうしたの? この前追い出したのは貴方なのに。鬼になんか用ですか?」 「……」  少し意地悪だったか。  先生が苦笑する。ええ、はい、オレはまだ子供ですよ。大人気ないとか当たり前だろ。  鬼とは口も聞けませんか。 「……私は、鬼によって生まれ育った世界から追い出されたの」  そういえばこの間もそう言っていた気がする。 「だからって鬼全体を嫌悪することはないんじゃない?」  なんでそんなことになったかはわからないが、それを聞く前に非難してやる。  彼女のやっていることはそれと同義だ。世界を揺るがす存在としてみてる妖たちとも同じだ。 「みんな同じよ」  彼女は拗ねた子供のような表情をする。  人間にもいろいろいるように、鬼にもいろいろいるだろう。流れる血がそうだからといって全員が全員同じなわけがない。     
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