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「オレの父親はブラウンズヴィル・オーガのボスだから、一緒にいれば無闇に鬼に狙われることはないと思うんだよね。なんかあっても護るしさ」
「あ、あいつに未練なんて無いもの!」
叫ぶようにそう言う彼女の握りしめられた手には、かなり力が籠ってるようにみえる。
「でも君の一方的な想いだけじゃなかったんだろ? 結果的にこっちに放り出されることになったのは君だけなんだろ。恨み事のひとつでも言ってやりたいとは思わない?」
彼女は下唇を噛んだ。
「オレだったら言いたいね」
運命に負けるなって。
種族が違うからなんだ! 一度は愛した人なんだろ! 最後まで護れよ! 誰かや何かのせいにするな! 抗い闘え!
「私も、言いたい……」
「だろ?」
彼女の頑なだった心にほんの少しだけ焔が灯ったかもしれない。
「よし、じゃあまずはみんなに相談してみるな」
先生が少し笑った。
しょうがないだろ。今はまだ、オレが今すぐ連れてってやるよ、なんて気軽には言えやしない。
「あ、その代わりさ、オレを鬼として一括りでみないでもらえるか?」
やっぱり言っておきたい。
「オレが鬼であることに変わりはないし、変わりようもないことだ。怯えられたり嫌悪の目で見られるのはちょっと辛いかな」
「……ご、めんなさい……」
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