六.セイレーンの予言《プリディクション》

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「うん。オレの父親も妹も、他の力を貸してくれる者たちの中にも鬼はいる。みんなオレにとってはいい人たちだから、すぐにとはいわなくていい、でも少しずつ慣れていってもらいたい」 「うん」  彼女のほんの少しだけ和らいだ表情で、軽く頷いた。  文月の働くマヤさんのバーは家と同じ方向の為、日も暮れたのでついでに送っていくことにした。ちなみに先生はまだ残業だという。あとでバーに顔出すと言っていた。  その途中でスーパー帰りの春海をみつけた。もしかしたらオレを待っていたのかもしれない。 「春海、悪いな。ちゃんと買えたか?」 「おう、バッチリ。……えっと、だれ?」  買い物袋をひとつ預かろうとすると、一緒にいる文月をみて春海は固まる。 「彼女は文月」  春海がかなり衝撃を受けた顔をする。 「な!? か、彼女!?」 「ん?」  声も若干裏返っている。 「セツ、紹介してくれるのはあ、りがたい……んだけどちょっとむ、無神経、なんじゃあないかなぁ」  こいつ、なんか勘違いしてやがるな。  眉間の辺りがひくひくしている。  そんな春海に文月は首を傾げる。 「文月はこっちに住む妖で、清明先生の知り合いなんだけど、かくかくしかじかで、鬼に命を狙われて妖界を追われてしまったんだって。だから立場的にはオレと似てるだろ? 協力し合えないかと思ってさ」  春海はなぜか止まっていて反応がない。 「春海?」     
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