七.深夜の訪問者《ビジター》

1/8
前へ
/243ページ
次へ

七.深夜の訪問者《ビジター》

「セツ、起きろっ!」 「な、なに!?」  就寝中に大声で頭の上で叫ばれて、慌てて飛び起きる。  自然に開かない目をこじ開けるようにして何事かと声の主を探す。 「猫だ、人虎たちが襲ってきやがった!」  徐々に頭が目覚めてくる。 「え、こんな時間に?」  開かない目を擦りながら、目覚まし時計をみるとまだ深夜二時だ。 「元々奴らは夜行性だからな」  春海も唸るように言う。 「……マナー守ろうぜ」  昼間寝てるところ襲ってやったらどうだろう。絶対キレるに違いない。  深い溜息を吐きながら布団から出る。部屋着のままで致し方ないが、あくびを噛み締めながらコートだけ羽織って深夜の外に出る。 「おい、どっちがセツだ?」  人虎一屈強な戦士と名高い奴が偉そうに聞いてくる。  それに対し彼女は面倒くさそうに答える。 「見ればわかるでしょ」  闇夜の中で、半妖セツと狼男の春海がこちらを睨んでいるのを夜行性の目が捉える。  彼女は苦々しく表情を歪め、顔を反らす。 「犬臭くてたまらん。お前が連れて来るのが早いだろ」  偉そうなくせに随分使えない男だ。  彼女は舌打ちしながらも、かの家に近付く。  闇の中にいくつもの瞳が不気味なほどに光っている。     
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加