9人が本棚に入れています
本棚に追加
勢いよく追い上げて飛び掛かるようにして首に喰いついた、ようにみえたが、実際は襟を掴んで龍人の動きを止めた。
「へへ、捕まえたぜ」
やっと自分も追い付いて呼吸を整える。
「お前、足大丈夫なのかよ」
「え? なんのこと?」
呆れた。さっき保健室行ったばかりだろう。
龍人を見やると、ビクっと竦まれる。
「君が……」
「すいませんでした!」
問い質そうとすると、先に勢いよく謝られる。
「ホントにごめんなさい、ごめんなさい許して下さい」
完全に萎縮してしまっていて、思わず春海と顔を見合わせる。
うーん、これは春海の想像が当たったって感じか?
取り敢えず理由を、と口を開いたが、被さるようにして訳を話し出す。
「なんで……」
「トイレ借りたら迷っちゃって、うぅ、ごめんなさい。出口探してうろうろしてたら、ひぃ、すいません、目の前に鬼がいて、もぅ、ビックリして思わず……」
突き飛ばしてしまったというわけか。
なんだかこっちが申し訳なくなるくらいに謝られる。苛めているわけじゃないんだが、勘違いされるぞ、これは。
シメる気なんて完全に失せた。
龍人だという彼は太陽の光によって銀に輝く髪に少し隠れた瞳も灰色で、手足が長く、初見で外人かなとは思うが人外とは思えない。
「鬼って見ただけでわかるの?」
最初のコメントを投稿しよう!