二.天地始粛

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「うちの大衍がなにかしましたか!」 「いえ、別に」  なにかしたと言えば階段から突き落とされたが。 「ではどうして大衍はこんな状態なんですか?」  犬嫌いなようで、なんて言ってもどこに犬がいるんだと言われてしまうだろう。 「違うんです、先輩! 僕がさっき彼に怪我をさせちゃったんです。でもちゃんと謝れなくて……」 「だからってお前を脅していいわけないだろ」  ああ、妖でも当たり前のように人間界で暮らし、当たり前のように庇ってくれる先輩がいるんだ。 「怪我をさせてしまったことは申し訳ない。ですが、大衍はうちの大事な選手です。反省してるようですし、そろそろ解放して頂けますか!」  相手側の高圧的な態度に、呆れていた春海までスイッチが入ってしまった。 「悪いがこっちもセツが危なく大怪我するところだったんだ。こいつの先輩だかなんだか知らないが、あんたは関係ない。外してくれ」 「関係なくはないです! 後輩の失態は先輩である俺の責任です!」  先輩の声がでかいので、なんだなんだと人が集まり出す。  妖の世界の話だとすれば、先輩は関係ないが、彼らは人間界で生きているのだ。ここは人間界のルールでいこう。     
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