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「うちの大衍がなにかしましたか!」
「いえ、別に」
なにかしたと言えば階段から突き落とされたが。
「ではどうして大衍はこんな状態なんですか?」
犬嫌いなようで、なんて言ってもどこに犬がいるんだと言われてしまうだろう。
「違うんです、先輩! 僕がさっき彼に怪我をさせちゃったんです。でもちゃんと謝れなくて……」
「だからってお前を脅していいわけないだろ」
ああ、妖でも当たり前のように人間界で暮らし、当たり前のように庇ってくれる先輩がいるんだ。
「怪我をさせてしまったことは申し訳ない。ですが、大衍はうちの大事な選手です。反省してるようですし、そろそろ解放して頂けますか!」
相手側の高圧的な態度に、呆れていた春海までスイッチが入ってしまった。
「悪いがこっちもセツが危なく大怪我するところだったんだ。こいつの先輩だかなんだか知らないが、あんたは関係ない。外してくれ」
「関係なくはないです! 後輩の失態は先輩である俺の責任です!」
先輩の声がでかいので、なんだなんだと人が集まり出す。
妖の世界の話だとすれば、先輩は関係ないが、彼らは人間界で生きているのだ。ここは人間界のルールでいこう。
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