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気やすい感じの会話に、注意の主は春海の同級生だとわかる。つまりは自分の一つ上の先輩だ。目が合ったので会釈だけする。
その先輩はそれに対し、ピンときたような、ははんという顔で返される。ああ、噂の年下の飼い主ね、と思ったに違いない。
どうしてそういう位置づけになったのか、春海に問い質したのは一度や二度では済まない。
注意された春海は感謝どころか、立てた金髪の頭が心なしかへなっとさせている。
「セツ、先に帰ってて」
「いいのか?」
こういう場合いつも、なんだかんだ言われて待たされる。どうせ同じ屋根の下に暮らしてるんだから連れないだの、途中でカツアゲされたらどうすんのだとか。正直うるさいのでいつもは大人しく従っている。
「今日の主役をこんな寒々しいとこで待たせるわけにいかないからさ」
「……わかった」
なんでそんなに大袈裟なんだか、と思いながらも一種解放された気分で頷く。
彼の切れ長の目が細められる。
「寄り道すんなよー」
「はいはい」
一個下だからって心配しすぎ。春海は春生まれなので二個離されることはあっても追いつくことはない。
すん、と鼻を一度すする。振り返って春海の背中を伺う。
一瞬獣の臭いがした気がしたんだが、気のせいか。
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