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「閏、おいで。ようこそ、オレたちの家へ」
玄関で白猫はオレを見上げた。
「足拭きないの?」
「あ、そうだよな。ちょっと待って」
気が利く猫だ。靴を履いてないんだ、足が汚れてて当たり前だ。
濡らしたタオルを敷いてやると、丁寧に足を擦って拭いている。
わきまえてるなぁ、と感心する。
「閏、あんなとこで何してたんだ?」
「別に」
ぶっきらぼうに答える。
猫に対して茶を出すのもどうかと思い、取り敢えずソファに座る。
猫も向かいのソファに飛び乗った。
「そのままだとセツが話しにくいから人型になりなよ」
「は?」
春海の言葉が一瞬で理解出来なくて聞き返す。
すると猫がくるりと一回転したと思ったら、次の瞬間には人間の女のコがソファに腰をかけていた。
「これでいい?」
またまたびっくりだ。
赤茶のパーマがかったロングヘアに、大きなオレンジの瞳が印象的な小さな顔。白い肌に白いワンピースを着て、首に赤く細いリボンを巻いている。
ちゃんと服は着てるんだぁと感心する。たぶん声に出してたらセクハラとでも怒鳴られただろう。
「あ、じゃあ麦茶でも持ってくるから」
「いいって、セツ」
「何も出さないわけにもいかないだろ」
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