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家に知人をあげて、茶の一つも出さないなんて、祖父母が聞いたら泣いて悲しむ。
「じゃあオレが持ってくる」
そう言って立ち上がり台所に向かう。
なんだそれ。彼女が話があるのは春海にじゃないのか?
残されたオレは猫の妖となにを会話したらいいのか。
「えっと、閏さんはどこから来たんですか?」
「閏でいいよ、私もセツって呼ぶし」
「オレの名前知ってるんだ」
感心すると、クスリと笑われる。
「妖で貴方のこと知らないのなんていないわよ」
「半人半妖は世界を揺るがすっていうやつ? もしかして閏もオレのことを狙って」
「まさか! 私は猫の妖よ。鬼になんて従うものですか」
彼女は見た目が可愛らしいが、猫らしくプライド高そうだな。
「そういうもんなの? オレを狙ってるのは鬼が中心なんだな」
「そんなことも知らないんだ」
そう、オレは何も知らない。今は自分のことすらわからないんだ。
「あんた、父親に狙われてんだよ」
「え?」
「なに? 春海のやつ、これも言ってやってないの?」
閏は小馬鹿にしたように笑う。
「あんたの命を狙ってきてるのは鬼の中枢ブラウンズヴィル・オーガ、そのトップにいるのが酒呑童子レキ、あんたの父親だよ」
そこではじめて父の名を聞いたというのはおかしいだろうか。
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