三.朔風払葉

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 だが、誰も教えてはくれなかったし、聞こうとも思わなかった。  死んだものだとばかり思っていたが、まさか自分の命を狙う主犯格の名として知るとは……。 「なんでオレを?」 「……あんたが母親を殺したからでしょ」  その言葉を理解するより先に背後でガシャンと音がして、振り向くと春海が麦茶の入ったコップを落としていた。 「閏!!」  鋭く怒鳴って、凄い形相で閏に詰め寄り、首に巻かれたリボンを掴み上げる。  睨みつけたまま沈黙する。 「し、知らない方が可哀想でしょ」 「それはお前の理屈だ。何も知らないお前が言っていいことだとでも思ってるのか?」  今まで聞いたこともないような、今にも殴りつけそうなほど切羽詰まった声で閏に迫る。犬の怒ってる時の唸り声みたいだ。  緊迫した空気の中、閏の言ったことを頭の中で反芻して整理する。 「オレが、母親を殺してるから、父親に命を狙われてるっていうのか?」  春海がハッとしたように掴んでいたリボンを放しオレを見る。 「春海、そういうことなのか?」  春海は悔しそうに顔を歪めた。 「まだ、知ってほしくなかった……」  そんなに気を遣うな。お前がそんな顔するほどショックは受けていないんだから。 「でも、そうじゃないんだ! セツが殺したわけじゃない!」     
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