9人が本棚に入れています
本棚に追加
まぁ、学校に迷い込んできた野良犬とでもじゃれ合ったと聞かされてもなんも不思議じゃない。あいつは妙に犬に懐かれるところがある。
カナカナカナカナーとヒグラシが鳴いている。
季節は夏から秋に変わろうとしていて、制服も漸く馴染んできた。
高校まで歩いて二十分。通学路も慣れたものだ。
人通りの少ない住宅街に入ると、いつの間にか霧が立ち込めて来ていた。どうやら家の方に向かうに連れて濃くなっているようだ。
重い空気と湿った靄に、一雨くるかと足を早める。
夕焼けのせいか、霧が紫色にみえて不気味だ。
「なんだ?」
行く先に人影が五つ並ぶ。戦隊もののヒーローたちが崖の上に並ぶように、等間隔に立っているのに違和感を感じる。
そこにぼやりと赤い光が浮かんだ。
背筋がぞっとするような感覚に、反射的に横に飛び込むようにしてなにかを避ける。
風が横切ったあと、轟音。
身を起こすと、自分が先ほどまで居た辺りに異変が起きている。石垣が崩れ、地面がえぐれている。まるでロケランか大砲でもぶっ放した跡みたいだ。
「なっ!?」
なにをしたのかわからないが、あの影たちの仕業だということはわかった。だが彼らは破壊兵器のようなものは手にしているようにみえない。
「なんだ、欠片の妖力も感じないじゃん」
最初のコメントを投稿しよう!