四.地始凍

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「猫に魚って相性どうなの?」 「不味そうだから興味ない」  閏はノーモンに一瞥もくれずに答える。 「あ、そう。それはよかった……」  今日は冷しゃぶだった。  魚だったら共食いになるのかどうか聞いてもいいだろうか。ノーモンは春海や閏と比べると大分おとなしめなので、怒鳴り散らされることはないだろう。だが逆に静かに怒ってる人の方が怖い時もあるので、今はやめておこう。 「ノーモンは十二の妖の一人?」 「いえ、まさか。私たちの長にあたる者がその一人です」  "長"ときくと、立派な髭をたくわえたご老人が目に浮かぶ。確か春海は十二の妖の一人と言っていた。その長と春海は並ぶのか? 「……春海って実際年いくつなんだ?」  春海の表情が固まる。 「……え、それいま必要?」 「お前、そこ誤魔化すよなぁ」 「そ、それよりもさ、十二の妖がなにを与えたか知りたくない?」  話を逸らされたのはわかったが、乗っかってやる。嫌なら問い詰めないけどさ、いじりたくはなるんだよな。 「なにをって?」 「あれ、言ってなかったっけ? 十二の妖はそれぞれセツに贈り物を与えたって」 「それ物語での話だろ」  眠り姫のパクリ。     
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