四.地始凍

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「でも納得。だからすべてのものを惑わす美しさがないわけだ」 「オレはお前の顔、好きだぞ」  慰めはよしてくれ。 「もうひとつ、十二の妖の前に君に贈った人がいるんだ。オレはそれを一番知っていてほしい」  死ねと言った妖か? いや、父親か? 「暦だよ」  ああ、母か……。 「オレたちが洗礼をすると教えたら、彼女はこう言った」 "それじゃあ、あたしは、人も妖をも愛す慈愛を授けるわ" 「彼女は人間だから、オレたちのそれとは違うんだけどさ」  人も妖も愛すような子であってほしいと母は願ったわけだ。  自然とそれはしっくりきた。  自分は人でもあり、妖でもある。だからどちらかを嫌うなんてことはきっとこの先もないのだろう。  夕飯の片付けを終え、一息ついていると、外から物音がした。車の音でも人の声でもないなにか変な音だった。閑静な住宅地にはあまりないことなので不審に思う。 「こんな時間になんだ?」 「僕見てきましょうか」 「いいよ、オレ出るから」  洗濯物をたたんでくれているノーモンがそう言ってくれたが、家主であるオレが行くべきだろう。春海はお風呂に入っているし。  玄関を開けると、陽はとっくに暮れているはずなのに、なにやら明るい。 「うわ、なに!」     
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