一.蒙霧升降

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「ホントだね。これじゃあ、ただの人間じゃない? 間違いないの?」 「こいつで間違いない。早く始末するぞ」 「狼がそんなに怖い?」 「群れで暮らす奴らは厄介だ」  なんだよこれ。  オレが狙われてんの? もしや殺される!?  また赤い光が浮かぶ。  どこに逃げるべきかと見渡すが、変な霧のせいで周りの状況がわからない。 「セツ!!」  春海の声? 掃除は終わったのか。  ぞわりと鳥肌が立つ。  目の前で光があがる。風と轟音。  真横でなにかが転がった。 「春海っ?!」  転がったものは人で、それが一目で春海とわかる。 「は、春海!! おい!」  彼に飛びつき、彼を揺さぶると液体がべっとりと手についた。  真っ白なシャツが紅く染まっていく。  嘘、だろ……? 「うっ」  急に吐きそうになり、反射で口を抑える。  気持ち悪い。  身体の中からナニかが出てこようとしている。  堪えきれない。  よくも。  なんだこの感覚。  どうしようもない。  殺してやる。  吐き出すしかない。  殺してやる! 「うわぁぁあぁ――――――――――!!!!!」  自分の叫び声を、どこか遠くで聞いたような気がした。  ゾクりと背筋が凍りつくような妖力に、彼らは動けない。     
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