四.地始凍

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 忽ち焔は弱まり、異母妹の姿が露わになる。肩まである赤毛に、顔の大きさに比例しない大きな瞳、短めの着物から伸びる細い脚には白いニーハイの靴下と高い下駄を履いている。 「あ……」  自分の焔をあっさり消されたことにショックを隠しきれないようだ。  春海の腕がまだオレの胸の前にある。護ろうというのか、阻んでいるのか。口をきくだけなら構わないだろ? 「君は父親の指示でここにきたの?」 「うるさい! 焔だけだと思うな!」  噛み付くように叫んで、伸ばした手をこちらに向けてくる。  風がまた渦を巻き始めようとした時、春海が短く叫ぶ。 「閏!」 「その風はさっき食らったから、二度目は効かないよ。風はあたしの得意分野だからね」  閏が余裕たっぷりに宣い、両手を胸の前から両側に開きセーフのような動作をした。  すると渦を巻いた風を疾風が真っ二つに切り裂いた。  そして安定さを失ったのか生まれようとした風は消滅した。  閏もかまいたちを使うのか。 「うそ……」 「今度はこっちの番!」  絶句した彼女の隙をつくように、閏が腰から刀を抜くような動作をする。  風の刃が放たれた。 「くっ……」  彼女が必死にそれを自らの風で方向を変える。  風の刃は斜め前の家の塀にぶち当たり、塀を破壊した。 「あーあ」  春海が頭を掻く。 「閏、どこ壊してんだよ」 「えーあたしー?」     
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